技術情報

蔵書紹介

弊社の蔵書をご紹介いたします。
弊社技術者による書評を掲載しております。

  • ゼミナール ゲーム理論入門

    ゼミナール ゲーム理論入門

    【書評】

    本書はゲーム理論の基礎解説書である。
    1 章ではゲーム理論の分類等のアウトライン、2 章から 9 章までは「完備情報ゲーム」(プレーヤーを取り巻く環境に不確実性がない状態で実施されるゲーム) の理論を解説し、10 章、11 章では「不完備情報ゲーム」(プレーヤーを取り巻く環境の情報が完全でない状態で実施されるゲーム) の理論を解説している。12 章は「協力ゲーム」(複数人からなるプレーヤーの組で行うゲーム) の理論を解説している。
    本書は、非常に具体的な例を用いてゲーム理論へ読者をいざない、その後で、具体例の抽象度を上げて理論を一般化する解説手法を取っているため、理解がしやすい。筆者は奥さんに「あなたの得意なゲーム理論で何とかしてよ」と要請され、ゲーム理論に基づいて行動したがうまく行かなかった例を挙げており、解説書としての要素以外でも好感が持てる。
    ゲーム理論が正しく機能するためには、「プレーヤーがゲーム理論を知っており、そのうえで合理的な判断 (ゲーム理論に基づく判断) を行う」などの、いくつかの前提条件が必要であるが、実際にはこの前提が満たされることはまずないため、ゲーム理論は現実ではなかなかうまく機能しない。この点についても丁寧に考察がなされている。
    本書は、ゲーム理論を用いたアプリケーションを作るという応用には向かないかも知れないが、ゲームという手続き構造に解を見出す論理構成は明快であり、十分に面白く読み応えがあった。

  • The Elements of Statistical Learning: Data Mining, Inference, and Prediction, Second Edition (Springer Series in Statistics)

    The Elements of Statistical Learning: Data Mining, Inference, and Prediction, Second Edition (Springer Series in Statistics)

    【書評】

    本書は Trevor Hastie, Robert Tibshirani, Jerome Friedman という Stanford 大学の大家達により書かれた、統計的機械学習法の集大成です。線形モデル、カーネル平滑化、モデル選択、モデル平均化、加法モデル、ブースティング、ニューラルネット、サポートベクタマシン、ランダム フォレスト、グラフィカル モデル、自己組織化など、この分野での基本的なリテラシーはおおよそ網羅されています。トピックは多岐に渡っていますが、広く浅く簡単に書かれているので、サーベイを行うときの起点として有用です。しかし各トピックを詳細に理解するには本書だけでは不十分なので、引用されている論文を読み込む必要があるでしょう。

    私は、高次元データの次元削減法をサーベイするために本書を利用しました。特に私の注目を引いたのは、本書の著者の一人である Friedman が提唱した MARS 法 (多変量適応的回帰スプライン法) です。MARS 法は、スプライン基底関数の積を基底関数の候補として考え、ボトムアップ的に基底関数を構成し選択していくという戦略をとるので、多変量であっても低次元のモデルを構築でき、モデルの解釈性が保持されやすいという性質があります。MARS 法は再帰分割法や加法モデルの一般化としてとらえることができますが、スプライン基底関数を使うので、推定される回帰関数は連続で導関数も連続、という好ましい性質があります。モデルの刈り込みにより自動的にモデル選択を行うので、ある程度パラメータ フリーに推定することもできるという点は、実用上うれしい特性であると言えます。実際、MARS 法を MATLAB で実装し、実データに適用してみたところ、とてもよいモデルが推定できました。

    なお、最近本書の邦訳が『統計的学習の基礎 ―データマイニング・推論・予測』という邦題で出版されたことを追記しておきます。

  • Nonlinear Programming: Theory and Algorithms

    Nonlinear Programming: Theory and Algorithms

    【書評】

    本書は非線形最適化の基礎から上級の話題まで扱いながら、どの部分も大変簡明に書かれているので読みやすく、非線形最適化について学習するにはお薦めしたい一冊である。特に数学的な記述が洗練されているので、抽象数学の背景がある方は好まれるに違いない。

    たとえば、最適化アルゴリズムの収束性を論じるために、アルゴリズム写像という統一的なフレームワークを導入し、Zangwill の収束定理や合成アルゴリズム写像の閉性定理・収束定理、線形独立方向に沿うアルゴリズムの収束定理などの基本となる命題を証明したあと、それらを基礎として多くの最適化アルゴリズムの収束性をきれいに証明している。

    よく知られた最適化アルゴリズム、たとえば、Newton 法や準 Newton 法、共役勾配法、最急降下法、循環座標法、Levenberg-Marquardt 法などは、探索方向の決定と直線探索という 2 つのアルゴリズムの合成として定義されるので、このフレームワークによって見通しのよい証明ができるのである。

    そもそも私がこの書籍を手にしたのは、劣勾配法に関する解説が目的であった。私が知る限り、国内の書籍には劣勾配法に関する記述はほとんど見当たらなかったからである。

    よく知られた最適化アルゴリズムは、目的関数が微分可能であることを前提としていることが多い。しかし、スパース推定などの近年研究されている分野では、微分不可能な関数が統計解析を行ううえで好ましい性質を持っていることが知られており、劣勾配法はその分野での最適化計算の理論に必要とされてきている。また本書は、Hooke-and-Jeeves 法、Rosenbrock 法などの勾配を使わない最適化法についても解説されており、これらはその方面への応用に役立つかも知れない。

    本書では劣勾配法に関する基本的な理論と、それを改善した空間膨張法 (space dilation method)、バンドル法 (bundle method)、切除平面法 (cutting plane method)、可変目標値法 (variable target value method) などの変種を導入し、詳細な参考文献を示している。

    非線形最適化という分野は奥が深く、様々な理論と工夫がなおも発展中である。数多くの参考文献が示されている本書は、理論家にも実務家にも役立つこと間違いないだろう。

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